不登校の小中学生で、「教育支援センター」やフリースクールのような場所へ通える人はもちろんそれで良いのですが、様々な理由から、どうしても行けない人もいます。
そのような場合、「家に居たら勉強が遅れてしまうし、社会性も身に付かない。どうしよう。」と、将来が不安になってしまいますよね。
ですが結論から言うと、基礎学力や社会性は家に居ても身に付けられます。
そこで今回は、不登校の小中学生が、家に居ても基礎学力や社会性を身に付けられる方法について、適応指導教室勤務7年目の私が、お伝えして行きます。
不登校の小中学生にとって将来の為に重要な二つの事とは?
ご存じのように、小中学生全員にタブレットが配布され、実際に学校や家庭で使用されています。
文科省の資料によれば、
全児童生徒にタブレットを配布し終えた後のゴールは「一人一人の端末から個人の教育データを収集し、分析。
最適な結果を一人一人にフィードバックする、個別最適化された学びの実現」とあります。
(令和2年1月の文科省資料 GIGAスクール構想の実現ロードマップ)
また「不登校は、取り巻く環境によっては、どの子供にも起こりうるものと考える。
不登校は、決して問題行動ではない。
そのため、不登校の子供の支援を行う際は、そのように受け取られないように、子供の最善の利益を最優先に行うことが求められる。
支援の際は、登校することだけを求めるのではなく、子供が自分の進路を自ら考え、社会的に自立することを目指すことが大切である。」と、述べています。
(フリースクール、不登校に対する取り組み)
上記の流れからすると、登校か在宅か、個々の学習スタイルを選べる時代がやって来るかもと、少し期待できますね。
もしそうなれば、タブレットを使って、リアルタイムで学校の授業を受けられるかも・・・。
でも、それを実行するための環境やシステムが整うまでには、少し時間がかかりそうです。
そこで、そうなるまでの間、家に居てもできる2つの重要な事をお伝えします。
基礎学力を身に付ける
まずは、不登校の小中学生が家で基礎学力を身に付けられる方法をお伝えします。
① 教科書を理解できるまで何度も読み込む事
「そんな事か」と言われそうですが、私が勤務する教室に通っている児童生徒達も、ほとんどがしっかり読んでいませんし、それでいきなり問題集から始めてもまず解けません。
(私自身の学生時代の反省も込めて・・。)
教科書の中にも基本問題がいくつか載っているので、まずはそこから学習すると良いでしょう。
基本問題ができるようになれば嬉しいし、自信も付いて、次の問題も解いてみよう!という気持ちになります。
その時、教科書に準拠した教科書ガイド(1冊2,500円前後)があれば、それらを利用すると、とても丁寧に説明されているし問題の解答も載っているので、役に立つと思います。
教科書の内容を理解したところで、問題集(学校で使用している物があると思います。)に進む、または教科書を学習しながら同時進行でも良いでしょう。
どうしても問題集から始めたい人は教科書を横に置いて、分からないことがあれば、すぐに確認できるようにすると良いです。
そして、分からない問題をいつまでも自力で解こうとせず、解答を見ながら理解を深める事をお勧めします。
考えすぎていやになってしまう前に、解決してしまいましょう。
スッキリしますし、そこで解き方を覚えて次に生かせば良いのです。
また、新しい教科書には所々にQRコードが記載されている場合もあるので、スマートフォンで読み取れば、例えば、英語なら発音を聴けたりと、以前にはなかった機能を使用することができます。
② 配布されたタブレットを使用して学習する
タブレットを家庭で自由に使用することを許可されているのなら、毎日でも利用して、繰り返し学習できます。
有料ですが、タブレットを用いた教材も販売されていますから、調べてみれば自分に合う教材を見つけられるかもしれませんね。
③ 塾に通う
もし他の生徒達と会うのがいやでなくて、自分の意思で行きたいと思うなら、塾に通って外出するリズムを身に付けるのも良いかもしれません。
「学校」は苦手だけれど、塾なら大丈夫な場合もありますので。
可能なら、少し離れた所の塾を選べば、同じ学校の生徒に会う確率は低いですし、そこで別の学校の気の合う人と出会えるかもしれませんし・・。
(ですがその為に送迎が必要となると、ご家族の負担になりますので、考えなければなりませんね。)
④ 家庭教師の指導を受ける
家庭教師をつける利点は、以下のような感じ。
・他の人に会わずに済む
・家から出なくて良いのでリラックスして指導を受けられる
・マンツーマンなので、自分が教えて欲しい所をピンポイントで学べる
「一人で勉強するのは難しいので誰かに教えてもらいたいけど、まだ外出するのは無理..」と言う場合は、有料ではありますが、利用してみるのも良いですね。
但し、家庭教師との相性が重要なので、事前に要望を出すなどの準備が必要だと思います。
⑤ インターネットの無料動画を利用する
インターネット上には、各教科、本当に分かり易く解説している無料の動画がたくさんありますので、自分の学習レベルに合わせて進めていけます。
自分の生活リズムに合わせて、好きな時間に学習できるので、気楽に始められますね。
学校で、早いペースの授業やたくさんの宿題にに追い回されるよりも、むしろ家庭で学習する方が時間をかけて理解を深められるのかもしれませんし、将来、高校生になったときにも困らない基礎学力が、身に付くと思います。
特に不登校の中学生は、高校入学後、勉強について行けるのかとても不安に感じています。
何度も繰り返しますが、とにかく基本が大切!!
基本が身に付いていて授業が理解できれば、不安が一つ解消され、自信を持って登校できますよね。
(ここまで家で基礎学力を付ける事に関してお伝えしましたが、あくまでも本人に勉強するエネルギーがある場合です。
教科書を見るだけでも体調が悪くなるようであれば、決して無理はしないように。)
そもそも、人はそれぞれ個性を持ち、いろいろな人生を歩んで行きます。
それなのに、全員が同じスタイルで学ぶなんて、少し無理があるのでは?と最近思うのです。
本来「学び」とは自ら進んで行うもので、何が必要なのかを自分で選択すれば良いし、もちろん年齢は関係ありません。
自分には、今、これが必要!と思ったときがその時なのでしょう。
「わからなかったことがわかるようになった、できなかったことができるようになった」という喜びを知り、自信を持って社会生活を送れるようになることが、学習する事の最も大切な意義だと思います。
社会性を身につける
不登校の子供たちの多くは、学校に行けない自分を責め、親に申し訳ないという気持ちを抱えています。
傷つき、元気がないときに「人と接する機会が必要だから。」と、本人の意思に反して無理にどこかへ行かせようとするのは(学校以外の場所であっても)酷です。
実際、私の職場に通ってくる子供達も、親に言われて渋々来る場合は長続きしない事が多いです。
自分の意思で決めなければ、あまり意味がないように思います。
まずは家で安心して過ごし、エネルギーをチャージすることが最重要でしょう。
そこで、家族が寄り添って見守ることは大切ですが、それは腫れ物に触るように接する事とはまるで違います。
まずは、子供がどのような未来を希望しているのか、そこに向かってどのようなサポートが必要なのかをよく聴いて、とことん話し合うことが大切です。
そして、少しでも心と体を働かせて、毎日を過ごす事もとても重要だと思います。
例えば、家の中でできる仕事はたくさんあります。
食器洗いや掃除、草取りなど、役割を決めて実行してみてはいかがでしょうか。
もちろん、本人にその気があれば、ですが。
「すごく助かったわ~。 ありがとう!」と感謝を伝えればお互いに気持ちが良いですし、家族に認められ、頼りにされて自信を取り戻す事はとても重要だと思うのです。
子供達は家で過ごす時間の中で自分と向き合い、いろいろな事を考え、人として大きく成長して行くのです。
ありのままの自分を愛し、それと同じように家族や他の人達の事も尊重する気持ちがあれば、自然に社会性は芽生えるのではないでしょうか。
そうすれば、一歩外に出て、自分の好きなコミュニティやボランティアに参加してみるのも、素晴らしい社会経験になるかもしれません。
同年代の友達を持つことも大切ですが、経験豊富な大人達と会話を交わしたり、協力して何かをするのも、とても貴重な時間だと思います。
そういう機会を増やす事で、ゲームやネット上の付き合いだけではなく、実際に人との触れ合いを楽しめるようになるでしょうね。
焦らず、まずは家庭の中で、社会の中で生きていくための自信を持つことが大切だと思います。
「家庭」は、一番小さな社会であると同時に(個人が最小の社会という考え方もありますが)、最も安心して過ごせる場所でありたいですね。
不登校からの引きこもりを克服した体験談
私の息子は、中学二年生の終わりに友人関係が原因で深く傷ついてしまい、それ以降は学校を休みがちでした。
その後、中学校はなんとか卒業しましたが、心の傷を引きずったまま高校生になりました。
しかし、高校一年生の三学期に遂に不登校になり、結局中退して通信制高校に入学し直す事に・・。
入学したとは言え、登校するのは月二回ほどで、それ以外は家で学習していたので、状況は不登校の時とほとんど変わりません。
ほぼ、引きこもりです。
ですので私は、もう少し外に出て太陽の光に当たってほしいな~と思っていました。
(心身の健康のため)
昼夜逆転の生活を送っていた時期もありましたしね。
でも、今までの出来事については、もうそれ以上話すことがないくらい語り合いましたし、とりあえずは家でエネルギーをチャージしているんだなと思い、静かに見守っていました。
そんな生活が一年ほど過ぎた頃、私は一つの事を決断しました。
それは、私が仕事に出る事です。
昼食を作ったり、洗濯物を取り入れたりと、少しでも家の中で自立した生活を送って欲しいと思ったからです。
私が家に居ればどうしても甘えが出ますし、もう高校生ですから、一人でやらせてみようと・・・。(小中学生の場合とは少し状況が違いますが、何か一つでも参考なれば、と思います。)
「家族でもそれぞれの人生があるのだから、お互いに自分のことはきちんと責任を持って生活しよう!
私は朝から仕事に行くので、お昼ご飯は自分で作ってね。
よろしく、ご協力下さい。」と宣言しました。
とりあえず簡単にできる肉野菜炒め等を作っていたようで、「たくさん作ったから、夕食はそれでいいよ。」なんて言うこともありました。
最初は仕方なくだったと思いますが、疲れて帰って来た私が大喜びしているのが嬉しかったのか、徐々にレパートリーを増やしていきました。
親子とはいえ、人の役に立っているのを実感し、自分の存在意義を確立していったようです。
それと同時に、「ダメな部分もあるけど、それも含めた自分のままで生きていけばいいんだ。」と思えたのかな?
私達は、人に頼りにされて少しでもその人の役に立てると、とても嬉しくなりますよね。
ちょっとオーバーかもしれませんが、なんか「自分もちゃんと生きてるぞ!」みたいな感じ。
そんなこんなで、少しずつ自信を取り戻してきたので、そろそろ家と学校だけでなく社会との関わりを持てるといいなと思い、声を掛けてみました。
「そういえば、近くのコンビニで店員さんを募集していたよ。」とか、「市が運営する劇団で、団員を募集していたよ。」と・・・。
意外にも、どちらにも行き始めた結果、外に出る日がグッと増えて生活のリズムが整ってきました。
自分でも、このままではいけないと思っていたところへ、タイミング良く情報が入ってきたのでしょうね。
結果的にこれらの経験が、大学進学への道に繋がったのだと思います。
そして、コンビニのバイトは高校卒業まで、劇団は大学2年生まで続ける事ができました。
そこで様々な人と出会い、たくさんの失敗を経験したり、または自信を持つことができたりと、人生において本当に重要なことを学ばせていただきました。(中学生にはアルバイトはできませんが、何か好きなことで外出できるチャンスがあると良いですね。)
不登校になり、その後もしばらくは、ほとんど社会との関わりを持たずに過ごしていた息子ですが、家で安心して過ごした時間は、自信を取り戻し社会へ出て行く為のかけがえのない大切な時だったように思います。
「家庭」という小さな社会の中で育まれた生きる力が、実社会に出た時に大きく花を咲かせるのです。
まとめ
子供は一見、何も考えていないように思われますが、実際には誰よりも自分のこと(将来の事とか)を考えて、少しずつ成長しているんですね。
私達は今、大人も子供も、時間や制約に振り回され、心身ともに疲れてしまっています。
そしていつかは少し立ち止まり、自分の人生をじっくりと考える時間が必要になると思うのです。
それがいつになるのかはその人によって異なりますが、不登校の子供たちは、それが少し早くやってきただけの事なのではないでしょうか。
再び歩き出すための貴重な時間を、安心してゆったりと過ごさせてあげたいと思います。
ここまで、学校には行かず、家で過ごす事について書いてきましたが、決して学校は不要だと言っているのではありません。
いろいろなご意見があると思いますが、私はそういう生き方があってもいいし、そういう時間があっても良いと思います。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。