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不登校の中学生におすすめの本3選「翔ぶ少女」「雨上がりの川」「瞳の中の幸福」

不登校の中学生におすすめの本3選「翔ぶ少女」「雨上がりの川」「瞳の中の幸福」

不登校で家にいると、自由な時間がありすぎて何をして良いか困ってしまいますよね。

そんな時は、ありきたりではありますが、本を読んでみてはいかがでしょうか?

私が選んだ3冊は一般的な小説ですので、その内容と自分の経験を重ねたり、登場人物の感情に共感したりと、気楽に楽しめる内容です。

それでは以下に、「翔ぶ少女」「雨上がりの川」「瞳の中の幸福」の3冊をご紹介します。

『翔ぶ少女』  原田マハ

今回ご紹介する本は、原田マハさんの「翔ぶ少女」です。

あらすじ

1995年、神戸市長田区。

震災で両親を失った小学一年生、丹華(ニケ)は、兄の逸騎(イッキ)、妹の燦空(サンク)とともに、医師のゼロ先生こと、佐元良 是朗に助けられた。

復興へと歩く町で、少しずつ絆を育んでいく4人を待ち受けていたのは、思いがけない出来事だった。

(本書 帯文より)

1995年、阪神淡路大震災が起きたことは、みなさんご存じのことと思います。

私は、前年の11月に出産したばかりの息子と寝ていて、地震発生時は(震源地からは遠く離れていたにもかかわらず)すごく揺れたので、思わず、息子を抱き上げたのを覚えています。

この本の主人公は、その地震によって両親を亡くしましたが、運良く通りがかった医師に助けられ、兄と妹とその人との4人で生きていくことになった少女のお話です。

誰かを真剣にを思いやる気持を、迷わず相手に素直に伝える事の大切さをあらためて教えてくれる一冊で、ぜひ、みなさんに読んでいただきたいと思い、ご紹介することにしました。

現在、不登校になって家で過ごしている小中学生のみなさんに、おすすめします。

「生きる」事のすばらしさを、考えるきっかけになればと思うからです。

そして、タイトルの「翔ぶ」とはどういうことなのか?

そこにも、ご注目です!

ここで、この本を読んでみて特に私が感じたことを、以下にまとめてみました。

かなり私的な内容も含まれますが、ご容赦下さい。

それを書かずにはいられないほど、心を揺さぶられてしまいました。

不登校の中学生におすすめの本3選「翔ぶ少女」「雨上がりの川」「瞳の中の幸福」

 

誰かを大切に思う気持ちを、素直に伝えたい

この物語の主人公ニケは、兄、妹と共に、両親や周りの人達の溢れんばかりの愛情を受けて育ちました。

将来に何の不安も抱かなかった、幸せな日々。

それが、あの地震で、跡形もなく崩れ落ちてしまったのです。

ずっと一緒にいて、大好きな気持ちをもっともっとみんなに伝えたかっただろうに..。

大切な人との別れは、いつ訪れるか予測できません。

それは何十年も先かもしれないし、今日かもしれない。

そう考えた時、愛する人達に自分の気持ちを、今、素直に伝えることはとても重要です。

私事ではありますが、大人になってからの私と母の関係は、あまり良くありませんでした。

元々、性格的にあまり似ていなくて反発することが多くなっていたし、母もまた、かなり厳しい言葉を私にぶつけることもありました。

そんな母が病気で亡くなった時、大好きだった父が亡くなった時ほどの悲しみを、私は覚えませんでした。

ですが、何年かして、幼い頃から愛情をたっぷり注いでくれた懐かしい思い出や優しい言葉、いろいろな幸せな出来事が胸いっぱいに溢れ、年老いた母に、なんとひどい事をしてしまったのかと自分を恥じるようになりました。

母が亡くなって14年も過ぎたのに、今でも部屋の中にひとりで居るときなど、涙が溢れてくる事があり、天に向かって「お母さん、ごめんね。大切に育ててくれて、ありがとう。大好きだよ。」と、つぶやいたりしています。

元気な時に、もっと優しい言葉をかけ、楽しく笑い合いたかった。

大切な人と今、一緒に居られることに感謝し愛を育む事の大切さを、母は自分の命をもって私に教えてくれたのかな。

だから私はニケのように、相手を思う気持ちを持ち続け、真摯に周りの人達に伝えていきたいと思っています。

強い思いは、必ず伝わる

ニケは、佐元良医師を心から尊敬し大切に思い、父のように慕っています。

その思いは並大抵ではなく、最後には彼のために、とんでもない「奇跡」を起こすのですが、作者はその「奇跡」を、強烈な表現で読者に迫って来ます!

そう、翔んで行くのです!!
(どういうことなのか、是非、読んでみて下さい。)

感動して、思わずニケを両手で抱きしめたくなりました。

ここまで読んで、強い思いはどんなに離れていても届く、という経験をしたことがあるのを思い出してしまいました。

再び私事で恐縮ですが、私は若い頃ある理由から、一ヶ月ほど親元を離れて暮らしていたことがあります。

両親のの反対を無視して・・・。

その間に、たった一度きりですが、そこには居ない「母の声」が聞こえたのです。

二階から階下に降りる途中、確かに絶対に、空耳ではなく、母が私の名前を呼ぶ声がしました!!

思わず私は「えっ!お母さん!?」と声を上げ、本当に階段から転げ落ちそうになりました。

私を思う母の強い気持ち(想念? 生き霊?)が飛んできたのだと、その時は少々恐ろしかったな~。

ごめん..。

そんな私たち親子の話は大したことではありませんが、戦時中、我が息子を戦地に送り出した母達の、胸が張り裂けそうな思いは、海を越え、間違いなく息子の元に届いていただろうと思います。

たとえ何千キロ離れていたとしても、一直線に飛んでいったはずです。

ニケの、佐元良医師に対する思いが、そうだったように。

まとめ

人間の体は、衝撃には弱く、何か重たいものが倒れてくれば、簡単に押し潰されてしまいます。

この話の地震のときも、家や家具の下敷きになったり火に包まれたりして多くの人が亡くなり、大切な友人や家族を亡くした人達は、死んでしまいたいほどの悲しみに暮れました。

それでも人々は、亡くなった人達への思いを胸に生き抜き、自分達の力で未来を切り拓いて来たのです。

人は今までも何度となく天災に見舞われたり、戦争が起きたりしても、必ず立ち直って来ました

一体、私たちのどこにそれほどの強さが秘められているのでしょうか?

人は今までの人生で、大切な人と育んできた愛や思い出などを支えに、そしてこれからも、誰かを思う強い心を力にしてこそ、生きていくことができるのではないでしょうか。

ニケやイッキ、サンクのように、どんなに悲しみに打ちひしがれようとも、諦めず、自分や周りの人たちを大切にして生きていれば、必ず未来は拓けるのです!

私も、周りの人達からの愛を体一杯に受け取り、それ以上の思いを力一杯みんなに伝えて生きていきたい。

いつか、命の終わりが来るその日まで。

この本を読み終えて、そんなことを思いました。

原田 マハ

1962年、東京生まれ。85年、関西学院大学卒業。96年、学士入学した早稲田大学卒業。アートコンサルティング、キュレーターを経て、2005年、「カフーを待ちわびて」で第1回ラブストーリー大賞を受賞し、翌年デビュー。12年、「楽園のカンバス」で第25回山本周五郎賞を受賞。著書に「ユニコーン ジョルジュ・サンドの遺言」「総理の夫」「ジヴェルニーの食卓」「生きるぼくら」「旅屋おかえり」など。共著に「エール」「東京ホタル」などがある。
(本書 作者略歴より)

『雨上がりの川』     森沢明夫

今回ご紹介する本は、森沢明夫さんの「雨上がりの川」です。

あらすじ

川合 淳は、中堅出版社に勤めるサラリーマン。
妻・杏子と娘・春香とともにマイホームで穏やかに暮らしていた。
しかし、春香がいじめに遭ったことで「ふつうの幸せ」を失い、バラバラになる川合家。
家族の絆を救ったのは・・・。
(本書 帯文より)

 

理不尽ないじめから、不登校になってしまった女子中学生(春香)が主人公のお話です。

この本が、春香と同じように不登校で悩んでいる本人や、そのご家族にとっても、何かヒントになれば、と思います。

なぜなら、春香はいじめに遭い傷つきながらも、ものすごい成長を遂げ、自分の人生を見事に切り拓いて行く姿に、勇気をもらえるからです。

登場人物はさほど多くないし、各人物の描写も丁寧なので内容を理解し易く、テンポ良く一気に読み進められます。

主に、3組の親子関係が描かれており、互いに絡み合いながら話は展開していきます。

 

私はこの本を読んで、次のような所に注目しました。

不登校の中学生におすすめの本3選「翔ぶ少女」「雨上がりの川」「瞳の中の幸福」

春香はどのようにして乗り越えたのか

成績も良く、家庭でも大切に育てられた控えめな女子が、他の女子生徒に妬まれて、いじめられるのは良くある話で、この話の春香もまさしくそんな感じです。

学校の対応も誠意がなく、腹立たしい限り!

両親の怒りや心配は当然のことで、私も自分の子供がそんな目に遭えば、なんとかしてやりたいと真剣に考えるでしょう。

そんな状況下でも春香は、右往左往する大人達を尻目に、大胆かつ緻密な方法で問題を解決し、更には、今後の自分の進むべき道をしっかり決断します。

痛快です!!

どのようにして、そんな事ができたのか?

それは多分・・・

何人かの大人達に出会う中で、人はそれぞれの悩みや問題を抱えていて、どうにかしようともがいている事を知るのです。

悩んでいるのは自分だけではないと気付き、自分以外の人達の辛い気持ちを理解しようとします。

このあたりで、自分をいじめてきた生徒達も何かに悩んでいて、あんな態度に出たのかもしれないと考えられるようになったのかもしれません。

だからと言って許すことはできないけれど、それはそれでもう置いといて、自分は前に進もう!と決心することができたのでしょう。

そして、不登校になってしまった現在の自分や、その周りで起きている問題を何とかしようと、ある人に相談します。

その人物が誰なのかは、後に「あ~、なるほどね」と納得するのですが、春香の賢さや行動の速さには驚かされます。

解決に向けての、謂わば『作戦』の全体像を、頭の中で組み立てたのでしょう。

いじめられての不登校、という辛い経験をしましたが、学校に通っているだけではおそらく出会えなかったであろう人達と関わった時間は、春香にとってはとても貴重なものだったように思います。

この本から何を学べるか

このお話には、春香一家以外の親子が二組登場するのですが、いずれも問題を抱えています。

お互いを思いやるが故だったり、問題から目をそらしていたりと理由はそれぞれありますが(私自身も含め)親子という関係は実に複雑です。

客観的に見れば、「それ、素直に言えばいいのに」と思うような事でも、なぜか言えない。

照れがあったり、そんな事いちいち言わなくても察してよ、という思いがあったり・・・。

このお話の中にも、他人へのアドバイスは的確なのに、いざ自分の娘に対しては上手くいかない人が登場します。

でも、せっかく縁あってこの世に生まれてきた親子ですから、お互いに心から信頼し合える関係でありたいですよね。

それには、その人の現在の立場や生きている環境を考えた上で、相手の気持ちを理解しようとする想像力が不可欠だと思います。

もし、自分がその立場だったらどう感じるか、どんな行動をとるか想像してみれば、もっとその人の気持ちに近付けるかもしれません。

そしてそれは、親子関係のみならず、誰に対しても大切です。

相手の気持ちを理解するには、想像力が必要ということですね。

前述の春香も、それができたからこその大躍進だったように思います。

物語の他の親子達も、そんな事を思ったかどうかは分かりませんが、最終的には相手のことを考えて行動し、一歩前進する事ができました。

悲しい場面もありましたが、一人一人が未来に希望を持って進んで行けそうで、心が和みます。

まとめ

この本を読んで、人は辛い出来事に出会っても、勇気を持って一歩踏み出せば、道は拓けるんだなあ、と、あらためて感じました。

何か問題にぶつかった時、諦めたり、いつまでも同じ場所に立ち尽くすのではなく、自ら何かを求めて動き出す力、そして人の気持ちを理解しようとする想像力を常に持ち続けていたい、そう思いました。

森沢明夫

1969年千葉県生まれ。早稲田大学卒業。吉永小百合主演で話題となった『虹の岬の喫茶店』、高倉健主演の『あなたへ』、有村架純主演の『夏美のホタル』など多くの作品が映画化され、ベストセラーに。近著に『ぷくぷく』(小学館)、『おいしくて泣くとき』(角川春樹事務所)などがある。
(幻冬舎plusより)

『瞳の中の幸福』     小手鞠るい

今回ご紹介する本は、小手鞠るいさんの「瞳の中の幸福」です。

あらすじ

カタログ会社で働く35歳の編集者、妃斗美。

婚約を破棄された過去を持つ彼女は、これからひとりで生きていくために、大きなものを買って、小さなものを拾った。

手に入れた二つの”幸福”は、彼女に何を与え、何を奪っていったのか。

                          (本書 帯文より)

何年か前から、『おひとりさま』という言葉がよく使われるようになりました。

「飲食店や遊園地など、グループ利用が多い施設を一人で利用して楽しむ人」、あるいは、「精神的に自立しており一人で行動できる人」、などの意味で用いられている言葉です。

私も若い頃、1年ほど一人暮らしをしたことがあり、いわゆる絵に描いたような『おひとりさま』生活を送りました。

それは、誠に気楽で、もう二度と誰かと暮らすなんてできない!と思うほどでした。

でも、自由な生活を手に入れることはできますが、病気になった時や、自分の将来について考えると、とても不安に思うことがありました。

今回は、そんな思いを漠然と心に描きながら、一人で生きている女性のお話です。

一見、とても華やかな生活を送っている主人公の女性が、心の中にはどんな悩みを抱えて、どのような気持ちで日々を送っているのか、『おひとりさま』の寂しさを解決しようと努力する中で何に気付くのかなど、女性ならではの視点で描かれていて、「そうだよね。」と、共感しながら読み進められます。

読み終えたら、「いろいろあるけど、もがきながらも一生懸命に生きてたら、ご褒美のようにいつか幸せがすぐそこにやって来るかもしれない。

いや、むしろ、幸せはいつもすぐそこにいて、私が気付くのを待っていてくれたのかもしれない、と思えるかも・・・。

大人の女性が主人公のお話ですが、不登校の中学生のみなさんに読んでみていただくのも良いと思います。

「幸せ」とは何か?について、きっと何かを感じて貰えるから。

不登校の中学生におすすめの本3選「翔ぶ少女」「雨上がりの川」「瞳の中の幸福」

妃斗美が失って、得たものとは

主人公の妃斗美は、この先も一人で生きていくだけの仕事もお金も手にしたけれど、どんなに頑張っていても、一人で生きる不安を無くす事はできずに過ごしています。

とは言え、その不安を払拭するだけの為に誰かと付き合う気にもなれないし、好意を寄せてくれる人が現れても、弱みにつけ込まれているようで、なんかその気になれない。

ここまで頑張ってきた自分は、そんなに弱くないし、大丈夫!寂しくなんかない!

もう、誰かに頼るのはやめて、一人で生きていこう!

そんなこんなで妃斗美は、「幸せ」になれそうな大きな物を手に入れ、小さな物(?)を拾います。

大きな物とは、生きて行くのに不可欠なアレ、雨露をしのぐアレです。

さすが自立した大人、大した決断力!

そして、拾った小さな物とは、もう本の表紙からお察しでしょうが、ふわっふわの仔猫ちゃんです。

「家があって、そこに猫がいれば、結婚なんて必要ない」なんていう言葉を聞いたことがありますが、まさにその状況です。

しばらくは至福の時が流れますが、人生は甘くありませんねえ。

妃斗美にとっては、もうこの世の終わりのような事件が勃発します。

ところで人間って、何か事が起きた時はなんで私だけ?とか、なぜ今?などと思いますが、後になって考えると、あれは必然だったんだと妙に納得したりすることってありますよね。

私にもそういう経験、何度かありました。

例えば、かかりつけの歯医者さんの予約が取れず、仕方なく別の所に行ってみたら、素晴らしいお医者さんに巡り会えたり。

すみません、話を戻して・・・

妃斗美が、身も心もボロボロになって諦めかけたその時、感動の瞬間がやって来ます!

なんとなく、そんな気がしていたけれど、ちょっとボンヤリしていた気持ちが、その瞬間に確信に変わります。

本当に求めていたものは、心を満たしてくれてあったかくて、実はすぐ近くにいてくれたのだと、気付くのです。

これこそが、私が先ほど述べた、必然の出来事の後にやって来る幸せだったのです。

この本を読んで感じたこと

妃斗美がそうだったように、人は幸せを失い、その大切さに気付いたときにこそ、日々の小さな幸せに感謝できるようになることが多いのではないでしょうか。

幸せとは、遠く離れたどこかから誰かが持って来てくれるものではなく、今まさに、ここにあるものなのだと。

そして、幸せは到達点ではなく、なんでもない日常の中にあると。

自分自身の心の中の「瞳」を凝らして見れば、気付けるはず。
(ん? 主人公の名前もヒトミさんですね。)

そんな事を再認識できたし、話の終わりは、その先の幸せを予感させるもので、とても温かい気分になれました。

また、妃斗美の感情の機微が細かく表現されていて、共感できるところが多く、
楽しく読み進められました。

みなさんにとっての、本当の幸せとは何でしょうか?

ちなみに、私は、お一人様が好き。

小手鞠 るい

1956年、岡山県生まれ。
1981年、第7回サンリオ「詩とメルヘン大賞」を受賞し、3冊の詩集を上梓。
1993年「おとぎ話」で、第12回「海燕新人文学賞」を受賞し、作家デビュー。
2005年『欲しいのはあなただけ』で第12回「島清恋愛文学賞」を受賞。
2009年、原作を手がけた絵本『ルウとリンデン 旅とおるすばん』で「ボローニャ国際児童図書賞」を受賞。
2012年、『心の森』が、第58回青少年読書感想文全国コンクール小学校高学年の部の課題図書に選出される。
ニューヨーク州ウッドストック在住。
(本書巻末 作者紹介より)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ABOUT ME
えま
家で過ごす時間が大好き! 一週間くらいなら、一歩も外に出なくても大丈夫です。 (まあ、庭へは出ますけど) 休日は、本を読んだり、のんびりまったり生きてます。